「そりゃあよかった。いま、カエルになるほうのやつは、
きせつはずれなもんで、なかなか手にはいらないのさ。
だけど、うたになるほうのやつならだいじょうぶ」
「じゃあ、はやく ひゃっぴきちょうだい」
あかねちゃんが両手をだすと、おたまじゃくしはゼリー
みたいに ぷるぷるくびをふりました。
「キミは、ただねていて おたまじゃくしがもらえると
おもっていたのかい? よのなか そんなにあまくは
ないのだ。だいいち、うたになるおたまじゃくしは、
じぶんでつかまえたやつでないと、いいうたにそだって
くれないって、しらなかったのかい?」
あかねちゃんは ぷるんぷるんとくびをよこにふりました。
「つかまえたいけど、どうやったらいいのか、わかんないよ」
「そんなことは、このキルケゴールさまに まかせたまえ。
ぼくはもうひゃくねんものあいだ、カエルにもうたにもならず
おたまじゃくしひとすじに いきている『おたまじゃくしの王』
なのだ。だからサンタクロースも『おたまじゃくしのことなら』
ってキミのところに ぼくをよこしたわけさ」
キルケゴールは あかねちゃんの
手をとり、おふとんから
つれだしました。
そしてカエルそっくりのりょうあしに
はずみをつけてピョンとゆかから
とびあがりました。
すると、どうでしょう。
あたまのうえにあったはずの、
へやのてんじょうにも いえのやねにも、
ぜんぜんぶつかりません。
あっというまに ふたりは
ほしぞらのまんなかに
うかんでいました。